
今回は、雫井脩介(しずくい しゅうすけ)の全著作の中から、特におすすめの4作品をご紹介します!
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①『火の粉』 ★迷ったらこれ!
基本情報
| 作品名 | 火の粉 |
| 著者 | 雫井脩介 |
| 出版社 | 幻冬舎(単行本・ノベルズ・文庫) |
| 発売年 | 2003年(単行本) |
| ページ数 | 577(文庫) |
冒頭のあらすじ
東京地裁の裁判官である梶間勲(かじま いさお)は、幼い子どもを含む一家三人が殺害された事件を担当する。
他に真犯人がいることを否定できず、決め手もないことから、梶間は被告人の武内真伍に無罪判決を下す。
その後梶間は退官し、大学教員に転職する。
退官の2年後に、梶間は勤務する大学のオープンキャンパスで武内に再会する。
そこで梶間が春に一軒家を購入したと話すと、しばらくして梶間の隣家に武内が引っ越してくる。
その後、梶間家の周辺ではさまざまな異変が起こるようになる。
じわじわと忍び寄る恐怖を描くサスペンス
自分が無罪判決を下した武内と再会した時点では純粋に喜びを感じていた梶間ですが、彼が突然隣家に引っ越してきてから、徐々に違和感を覚えるようになります。
このように、梶間家の日常に段々と影がさしていく恐怖が、本作の大きな魅力です。
家族の関係を丁寧に描く
本作に登場する梶間家は、以下の登場人物で構成されています。
- 梶間勲:一家の主
- 梶間尋恵:勲の妻
- 梶間曜子:勲の母、尋恵が主に介護をしている
- 梶間俊郎:勲の息子
- 梶間雪見:俊郎の妻
- 梶間まどか:俊郎と雪見の娘
- 相田満喜子:勲の姉、たまに梶間家を訪れる
この家族は曜子の介護などさまざまな課題を抱えており、「みんな仲良し」というような単純な関係ではありません。
丁寧に描かれた家族の関係が、より一層物語に深みを与えています。

のほほんとはしていませんが、家族小説としても読める作品です
②『犯人に告ぐ』
基本情報
| 作品名 | 犯人に告ぐ |
| 著者 | 雫井脩介 |
| 出版社 | 双葉社(単行本・文庫) |
| 発売年 | 2004年(単行本) |
| ページ数 | 672(文庫合本版) |
※文庫は、上下巻に分かれたもの(2007年刊行)と1冊になった合本版(2025年刊行)があります。
冒頭のあらすじ
神奈川県警・捜査一課特殊犯係の管理官を務める巻島史彦(まきしま ふみひこ)は、誘拐事件の現場指揮に失敗し、刑事部長の曾根要介(そね ようすけ)によって所轄へ飛ばされる。
6年後、川崎市で男児が殺害される事件が相次いで起こるが、捜査は行き詰まる。
神奈川県警本部長に就任した曾根は、所轄で成果を上げている巻島を呼び寄せ、特別捜査官として川崎事件の指揮を執らせる。
曾根は「劇場型捜査」として、巻島にニュース番組への出演を命じる。
ニュース番組を使った「劇場型捜査」を描くサスペンス
本作は「劇場型犯罪(マスメディアなどを犯人が巻き込み、世間からの注目を集める犯罪)」に「劇場型捜査」で対抗するという物語です。
地道な捜査ではなかなかたどり着けない犯人を探し回るのではなく、メディアという舞台におびき寄せるために、捜査の指揮を執る巻島がニュース番組に出演します。
そのため、謎を解くミステリーというよりは、メディアでの警察と犯人の攻防を描くサスペンス色の強い作品です。
犯人だけではない「敵」
この劇場型捜査では、犯人だけでなく、警察内部にも「敵」が現れます。
本来なら犯人逮捕のために団結すべき警察組織内から、なぜ「敵」が生まれてしまうのか?
このサブストーリーも本作の大きな魅力の一つです。
特に、曾根の甥で神奈川県警総務課長の植草というキャラクターが非常に人間臭くて味わい深いので、注目していただきたいです。

劇場型捜査ならではの「敵」が登場します
本作はシリーズ化されており、『犯人に告ぐ2 闇の蜃気楼』と『犯人に告ぐ3 紅の影』が刊行されています。
③『互換性の王子』
基本情報
| 作品名 | 互換性の王子 |
| 著者 | 雫井脩介 |
| 出版社 | 発行:水鈴社、発売:文藝春秋(単行本) |
| 発売年 | 2023年(単行本) |
| ページ数 | 440(単行本) |
冒頭のあらすじ
飲料メーカー「シガビオ」の社長・志賀英雄(しが ひでお)の御曹司である事業部長の成功(なりとし)は、三十手前にして取締役への就任を目前にしていた。
さらに意中の山科早恵里(やましな さえり)との関係も順調で、食事の約束も取り付けていた。
そんな時、成功は何者かによって別荘で監禁されてしまう。
半年後に解放されるが、シガビオの事業部長には異母兄の実行(さねゆき)が就き、成功は営業部の平社員としてやり直すことになる。
仕事×恋愛×ミステリー
本作は、飲料メーカーを舞台に商品開発や営業を描いたビジネス小説としての要素に加え、成功や実行と女性社員の恋愛要素、さらに「なぜ成功は監禁されたのか?誰が監禁したのか?」というミステリー要素も組み合わされています。
その中でも特にビジネス小説としての側面が強く、乳酸菌飲料の新商品開発などが丁寧に描かれています。

会社内の人間関係も面白いです
キャラクターの対比
本作は対照的に描かれたキャラクターが非常に魅力的です。
主人公である成功と異母兄の実行という男性二人の対比に加え、成功の思い人・早恵里と新たな成功の同僚・伴内星奈(ばんない せいな)という女性二人の対比も描かれています。
この二対のキャラクターの違いが鮮明で、とても生き生きと描写されています。
④『クローズド・ノート』
基本情報
| 作品名 | クローズド・ノート |
| 著者 | 雫井脩介 |
| 出版社 | KADOKAWA(単行本・文庫) |
| 発売年 | 2006年(単行本) |
| ページ数 | 448(文庫) |
冒頭のあらすじ
教育大学の二年生・堀井香恵は大学のマンドリンクラブに所属し、文具店でアルバイトをしている。
香恵は教員になろうと思い大学に入学したが、自分には務まらない仕事なのではないかと考えるようになっていた。
そんな時、香恵は自室のクローゼットで前の住人が忘れていったと思しきノートを見つける。
ノートの中は見ないようにしていたが、なかなか持ち主は現れない。
孤独を感じた夜に、香恵は思い切ってノートを読み始める。
丁寧に過程を描く恋愛小説
本作のストーリーの主軸には2つの恋愛関係があり、どちらも「いきなり告白して付き合う」というような展開ではなく、徐々に進展していく過程が丁寧に描かれています。
ピュアでありながらリアリティのある恋愛小説を読みたいという人におすすめの作品です。
人間味が溢れるキャラクターたち
雫井脩介の作品はどれも人物造形がしっかりしていますが、本作はサブキャラクターも個性があって人間らしさが楽しめます。
「良い人」「悪い人」という単純な分類ではなく「基本的に良い人だけど欠点もある」「一見嫌な人だけど良いところもある」というようなリアルなキャラクターたちが登場します。

ちょっとクセのある文具店の客がいい味を出しています
万年筆が欲しくなる
香恵はとあることがきっかけで万年筆が好きになり、アルバイト先の文具店で万年筆を販売します。
そこで登場するいろいろな万年筆の見た目や書き心地、線の感じなどの描写がとても魅力的です。
実在の万年筆の名前が多数登場するので、実物の画像を見ながら読むのもおすすめです。
◆【全著作から選定】雫井脩介のおすすめ小説まとめ
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①『火の粉』 ★迷ったらこれ!
家族の問題を盛り込んだ、じわじわと忍び寄る恐怖を描くサスペンス作品
②『犯人に告ぐ』
ニュース番組を使った「劇場型捜査」を描くサスペンス作品
③『互換性の王子』
対比的なキャラクターが魅力の「仕事×恋愛×ミステリー」作品
④『クローズド・ノート』
人間味が溢れるキャラクターが登場する、丁寧に過程を描く恋愛作品
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