
人の暗部を描いたダークな小説が読みたい!

悪の側が主人公の作品が知りたい!
以上のような方へ向けてこの記事を書いています。
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①『葬列』 著:小川勝己(おがわ かつみ)
基本情報と冒頭のあらすじ
基本情報
| 作品名 | 葬列 |
| 著者 | 小川勝己 |
| 出版社 | KADOKAWA(単行本・文庫) |
| 発売年 | 2000年(単行本) |
| ページ数 | 519(文庫) |
冒頭のあらすじ
身体が不自由な夫とともに古い小さなアパートで暮らす三宮明日美(さんのみや あすみ)は、借金の返済に追われ、苦しい生活を送っていた。
明日美はある日、自分が苦境に陥る原因をつくった葉山しのぶと再会し、「一緒に現金輸送車でも襲わないか」と誘われる。
ある事件がきっかけで明日美としのぶは藤並渚(ふじなみ なぎさ)という孤独な若い女と知り合う。
この三人の女と、男手一つで娘を育てている気弱なヤクザ・木島史郎が出会い、人生を一発逆転させる作戦を企てる。
平凡な人間が悪の世界へ落ちていく
明日美、しのぶ、渚、史郎という本作の主人公たちは、善人とも悪人ともいえない、ごく平凡な人間たちです。
一応史郎はヤクザではあるものの、自分より下の立場の者にすら舐められてしまうヤクザらしくない気弱なヤクザで、悪の世界で生きていけるような人物ではありません。
こういった平凡な人間が悪の世界へ足を踏み入れていく展開が、本作の大きな魅力の一つです。
まともじゃない人間のオンパレード
本作の登場人物は、ヤクザたちはもちろんのこと、それ以外もまともとはいえないキャラクターだらけです。
自分より下の立場のものをひたすら威圧する人間、とにかくねちねちとした人間、女のことしか頭にない人間、一見丁寧だが突然激昂する人間など、本当にバラエティに富んだ嫌な人間たちが登場します。

人の嫌な部分が存分に描かれた作品です
②『白夜行』 著:東野圭吾 ★迷ったらこれ!
基本情報と冒頭のあらすじ
基本情報
| 作品名 | 白夜行 |
| 著者 | 東野圭吾 |
| 出版社 | 集英社(単行本・文庫) |
| 発売年 | 1999年(単行本) |
| ページ数 | 864(文庫) |
冒頭のあらすじ
1973年、建設途中で放置された大阪のビルで質屋「きりはら」の主人・桐原洋介の遺体が発見される。
洋介は刺殺されたと見られ、殺人事件として捜査される。
容疑者は見つかるものの、犯人は特定できず事件は迷宮入りしてしまう。
捜査の中で容疑者の一人と見られた西本文代の娘・雪穂と、被害者の息子・亮司は別々の中学に進学し、交わることなく別の人生を歩んでいくが、二人の背後にはいくつもの犯罪行為が浮かぶ。
男女の19年の軌跡を描くクロニクル的作品
本作は雪穂と亮司を主人公に、二人の1973年から1992年までの19年間を描いた作品です。
小学生時代から始まり、中学、高校、大学、社会人とエピソードを積み重ねていきますが、それぞれのエピソードには犯罪行為が見え隠れしています。
各エピソードはそれぞれ一つの小説になるほど完成度が高く、後のエピソードで前のエピソードの真相が明かされるような工夫も凝らされていて、800ページを超える分量を一気に読ませる傑作です。

人間関係の整理もうまく、とても読みやすいです
内面を描かれない二人の主人公
本作は主人公である雪穂と亮司が何を考えているか、その内面は一切描かれません。
「どうして〇〇するのだろう?」「なぜあの人には△△して、この人には□□するのだろう?」というように、いろいろな想像ができるのが楽しく、小説の醍醐味を体験できる作品です。
TBSのドラマ版『白夜行』では原作小説とは異なり二人の内面がしっかり描かれており、ひとつの小説の解釈として楽しめます。

東野圭吾の作品を初めて読む方は、以下の記事もぜひご覧ください!
③『禿鷹の夜』 著:逢坂剛(おうさか ごう)
基本情報と冒頭のあらすじ
基本情報
| 作品名 | 禿鷹の夜 |
| 著者 | 逢坂剛 |
| 出版社 | 文藝春秋(単行本・文庫) |
| 発売年 | 2000年(単行本) |
| ページ数 | 384(文庫) |
冒頭のあらすじ
青葉和香子は高速道路で車が故障してしまい、通りがかりの男に助けを求めるが、その男に襲われそうになる。
その場に居合わせた神宮署の刑事・禿富鷹秋(とくとみ たかあき)は和香子を救う。
禿富は「渋六興行」というヤクザのボス・碓氷(うすい)を、南米マフィアの送り込んだ殺し屋から守り、恩を売る。
後日、禿富は渋六興行の幹部・水間からみかじめ料を奪ってみせるが、その後碓氷たちのもとへ返しに来る。
禿富は南米マフィアから碓氷を守る代わりに、暗に金を要求する。
南米マフィアは碓氷を始末するため、次なる刺客を日本に送り込む。
冷酷な刑事×ヤクザ×南米マフィアの殺し屋
本作の主人公である禿富は、ヤクザに金をたかる非道な刑事です。
禿富は渋六興行というヤクザに接近して、ボスの碓氷を狙う南米マフィアの殺し屋と対峙します。
ヤクザと殺し屋がいるのに、一番イカれているのが刑事という面白い構図になっています。
禿富は内面描写がされないため、その言動から彼の心情を想像する面白さもあります。

「ヤクザに恩を売った後に、今度は金をぶんどる」という行動からもわかる通り、とんでもない刑事です
短めで読みやすいシリーズ一作目
本作は逢坂剛による「禿鷹シリーズ」の一作目です。
「禿鷹シリーズ」は禿富を主人公に書かれた全五作のシリーズ作品です。
終盤の作品は分量が多くなりますが、本作は400ページ弱で、展開もスピーディーなので非常に読みやすいのが特徴です。
なお、シリーズ終盤の作品のあらすじには重大なネタバレがあるので、これから読み進めようと考えている人は注意してください。
④『孤狼の血』 著:柚月裕子(ゆづき ゆうこ)
基本情報と冒頭のあらすじ
基本情報
| 作品名 | 孤狼の血 |
| 著者 | 柚月裕子 |
| 出版社 | KADOKAWA(単行本・文庫) |
| 発売年 | 2015年(単行本) |
| ページ数 | 464(文庫) |
冒頭のあらすじ
昭和63年、広島県の呉原(くれはら)東署の暴力団係に配属された日岡は、暴力団係班長・大上(おおがみ)の下につくことになる。
大上は暴力団との癒着が噂されており、法に触れる捜査も辞さない型破りな刑事だった。
暴力団のフロント企業である金融会社の社員が失踪した事件の捜査を進めるうちに、暴力団同士の衝突が起こる。
悪徳刑事の行動で正義を問う
本作は、暴力団がはびこる呉原という地を舞台に、大上という「悪徳刑事」の行動を通して、いったい正義とは何なのかを問いかける作品です。
違法捜査は、違法という点だけを見れば「悪」かもしれませんが、それによって明らかになる事実や救われる人もいるということを考えると、単純に割り切れるものではありません。
こういった物語に、多彩なキャラクターたちと荒々しい広島弁が組み合わさり、骨太な作品に仕上がっています。

「~じゃろうが」「~ちゃる」といった方言がいい雰囲気を作り出しています
ミステリーとしての魅力
本作の大きな魅力は、ノワールの要素だけではなくミステリーとしても完成度が高いことで、「日本推理作家協会賞」を受賞しています。
終盤に明かされる真相は非常によく練られたもので、大きなカタルシスを感じます。
⑤『欺す衆生』 著:月村了衛(つきむら りょうえ)
基本情報と冒頭のあらすじ
基本情報
| 作品名 | 欺す衆生 |
| 著者 | 月村了衛 |
| 出版社 | 新潮社(単行本・文庫) |
| 発売年 | 2019年(単行本) |
| ページ数 | 752(文庫) |
冒頭のあらすじ
悪辣な詐欺商法を行う「横田商事」に勤める隠岐隆(おき たかし)は、横田商事の崩壊後、小さな事務用品メーカーの営業マンとしてまっとうに働き始める。
隠岐は元横田商事社員であることを隠していたが、同じく元横田商事社員の因幡充(いなば みつる)に再会し、詐欺商法に執拗に誘われる。
押し切られて再び詐欺商法を始めた隠岐は、さまざまな手口に加担し、ヤクザとも関係を持つようになっていく。

横田商事は、1980年代に社会問題となった「豊田商事」をモデルにしています
家庭を持つ男のノワール
ノワールの主人公というと、独り身であったり、家族との関わりがほとんどなかったりということが多いです。
しかし、本作の主人公である隠岐はまともな家庭を持つ男で、妻・娘二人と同居しています。
「詐欺に手を染めていくことで、隠岐と家族の関係はどうなるのか?」という部分がしっかり描かれており、家庭を描いた異色のノワールとして、とても魅力的です。
さまざまな詐欺の手口のディテールが描かれる
本作では原野商法や和牛商法といった詐欺の手口が扱われており、その具体的なやり方もわかりやすく詳細に描かれているため、リアリティがあります。
「こんなことまでされたら、自分も騙されてしまうだろうな」と感じる、やり口のすさまじさが面白いです。
⑥『悪の教典』 著:貴志祐介(きし ゆうすけ)
本作の文庫版は上下巻に分かれています。
基本情報と冒頭のあらすじ
基本情報
| 作品名 | 悪の教典 |
| 著者 | 貴志祐介 |
| 出版社 | 文藝春秋(単行本・ノベルス・文庫) |
| 発売年 | 2010年(単行本) |
| ページ数 | 944(文庫・上下巻合計) |
冒頭のあらすじ
晨光(しんこう)学院町田高校に勤める蓮実聖司(はすみ せいじ)は、一見すると気さくで爽やかな人気の英語教諭だった。
しかし実際には、蓮実は共感性の欠如したいわゆるサイコパスで、問題解決のためには手段を選ばない。
学校という閉ざされた空間で、蓮実は自分の理想の王国を作り上げるため、悪事に手を染めていく。
社会に溶け込むサイコパス
本作の主人公である蓮実は、フィクション作品によくある「快楽殺人を行うサイコパス」ではなく、目的のために最適な手段が犯罪である場合にそれを厭わず実行する、リアリティのあるサイコパスです。
基本的に人当たりがよく、魅力的に見えるため、もし蓮実のような人物に出会ってもサイコパスだとはとうてい考えないでしょう。
このような社会に溶け込んでいるサイコパスが欲望のままに行動する恐ろしさを描いた作品です。
蓮実聖司の内面を覗く恐怖
蓮実は冗談が好きで、よくふざけたことを言葉にしたり、心のなかで考えたりします。
その中にはとても不謹慎なものもあるのですが、次第に冗談で不謹慎なことを言っているのか、本心が不謹慎なのかがわからなくなってきます。
この得体の知れない蓮実の内面を目の当たりにする恐怖が、本作の大きな魅力の一つです。
◆日本のノワール小説おすすめ6選まとめ
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